寸法しっちゃかめっちゃか

箪笥の中身

みあです。

「箪笥の中はカオス・・」

そんな感覚で、着物の整理に頭を悩ませる方は多くいらっしゃると思います。自分用に仕立ててもらったのではなく譲られた着物が多い、何十年と引出しを開けてすらいない、お手入れが必要ですぐに着られない、何を持っているのかいまいち把握できていない、いや、そもそも自分で着られないし何が必要かもわからないから整理できない・・など。お悩みはひとそれぞれ(#^.^#)

我が家には祖母、母、私と3代分、それぞれに仕立ててもらった着物があります。箪笥3竿いっぱいに入った着物の合計枚数は? 答え:わかりません(笑)

煎茶教室を開いていた祖母の着物は、礼装からひととおり揃っており、数は一番多いです。夏用、袷の喪服から、留袖、訪問着、色無地、付下げ、小紋、紬・・紋付き、紋無し、いったい何が何枚あるのか、多すぎていまだに数えていないのでわかりません。次に多いのは母の着物で、これまた礼装からおしゃれ着までひととおり揃っています。きっと祖母はその時どきで、結婚する娘に、あるいはお茶会で手前や童子をする孫娘に、成人式前の孫娘に、愛情をもって仕立ててくれたはずです。しかし、残念なことに母と私には寸法が合わず気持ちよく着られないものも多々あるのです。というか、ほとんどが気持ちよく着られない。

え?おばあちゃんのはともかく、それぞれ仕立ててもらっているのにドウイウコト??(゜-゜)

祖母は小柄でふくよかな人でしたので、身長160センチほどあって手も長い(足はシランけど)母と私には、彼女の着物はそもそも裄丈が短く、身幅も合いません。でも、着物は元来洋服のようにきっちりサイズをあわせて着るものではありませんし、多少のことなら直さずとも着られるものです。しかしながら、私たちに「合わない」という理由はそれだけではありませんでした。

祖母は昔から慎重さとは対極にあり、細かいことを気にしない性格で、自分至上主義、何かやろうと思うとすぐさま「いってまえ~」のパワフル猪突猛進タイプでした。物事の整理整頓は大の苦手、好奇心旺盛でとてもハイカラさんで新しいものが大好き、思いつきではじめちゃうことも多いけど、いろんなことにすぐに飽きちゃう。そんな祖母が自分や母、私用に着物を仕立ててもらおう!と決めた時には何が起こるか。

祖母本人のものはまだしも、母や私の着物については、その時どきで思いついた「ええ加減なサイズ」で注文してしまう(゜゜)・・

のです。実は、仕立ての度に必要な寸法は測ってもらっているのですが、祖母のその場のひと言で出来上がり寸法が少しずつ変わってしまうのです。(例えば「裄丈が長すぎるのはみっともない」とか、「繰越しをもう少し詰めて」とか。)

で、そんなこんなを繰り返した結果・・まだ着物を仕立てることの手順や、他人にはわからない自分の着心地の好み、気を付けるべき点などもよくわかっていなかった若かりし日の母や、成人前の私が仕立ててもらったものについては、着物によって繰越し、身幅、裄丈、袖丈、抱き幅などあちこちの寸法が、行き当たりばったりとしか思えない頻度でほんの少しずつ異なり、また長襦袢もこれまたほんの少しずつ異なるものばかり・・というしっちゃかめっちゃかなラインナップとなりました。この娘にはこの寸法はこうしておくのが良いだろう、などという基本寸法の感覚がなかったのだとしか思えない( 一一) おばあちゃ~ん、なんでやねん(T_T)

母が結婚した後や、私が長じてからは、それぞれ祖母の性格をよく知ったうえで付き合ってきていました。しかし、当時の母も私も、思い立ったが吉日の祖母に「呉服屋さんに行くよ」と言われて一緒に行って、それぞれ仕立ててもらった着物や長襦袢が、その度ごとに明確なルールなく少しずつ異なった寸法で注文していることじたいに気づいていなかったし、それが後々どんなに大変になるか想像もついていなかったの(T_T)

つまり、問題は大きく分けて3つあり、

①祖母の着物は母と私には小さい

②母と私の着物は、体型を別にして、着物・長襦袢のみを見ただけでも、各寸法がバラバラ(←これは注文時の祖母の意向に沿ったのだと思われる)

③母も私も、各自の着物・長襦袢でそもそも「身に合っていない」寸法のものがある(←ここは、和裁をはじめてわかった事実です。なんでなのか、どうしても理解できない。祖母が「ええ加減に」希望を伝えたとしても、採寸していて身に合わない寸法で仕上げることがあり得るの?仕立てをお願いしていた呉服屋さんは何軒かあったものの、デパート内の呉服屋で発注することもあったので、採寸の人が着物を着ない営業さんだったとか?今となってはわかりませんが。)

結果どうなるか。

着たいものを着たい時に着られず、これが合うはずだと見える組み合わせで着てみても、長襦袢が身八つ口からぎょっとするくらい見えたり袖口から3分くらいピョロッと出てくる、逆に長襦袢の抱き幅が身に合っていないので本来見えるはずの長襦袢の襟が着物の中に引っ込む、繰越しが身に合っていないので適度に衣紋を抜くと変なところにしわが寄る上に、抜いた衣紋が維持できない・・などという着心地の悪さ。手を必要以上に引っ込めておく、長襦袢の袖をつまんでおく、襟元と身八つ口と袖口を常に気にしておく・・着る度に感じるそんな小さないろいろがストレスで、どうしても必要な時以外着る気がなくなってしまっていました( ;∀;) モッタイナイ

縮緬・絞りなどの特性等によって多少気を付けたりする点はあるものの、基本的に胸の大きさや肩幅、お尻の大きさなどの体型の特徴にあわせたり、着心地の好みを加味したうえで、基本的に寸法を決めて仕立てていれば、自分用に仕立てたものの大半で体型が変わってもいないのに着心地が悪いなどということはおきない、と思うのです。いえ、思うのではなく、「仕立てる」というのは、そういうもののはずです。

母も私も、着る度に「あれ?なんで?」「あら?おかしいわね」と思いながら、「今日は着方が悪かった?」などと考えたりして、やっといろんな寸法が仕立て時からおかしいということに気づいた時にはどの着物がどの長襦袢と合うのか、そもそも合うものがあるのかどうかすらわからなくなってしまっていたのです。

着物一枚ずつ全てに対の長襦袢があるのか、というと、数を見る限りそうでもない。そうすると確実に対になっているとわかっている組み合わせ以外の着物と長襦袢は、合うはずだと見える組み合わせでも、裄丈は合っているけれど袖丈が少し違う、こっちは袖丈はあってるけど裄丈が少し違う、他の寸法は合っていても襦袢と着物の繰越しが合っていないから襟の間に隙間ができる、肩山からの袖付けが異なっていて長襦袢が振りからでてしまう・・。

洋服を着ていて、ずりあがったスカートの裾から0.5センチほどスリップが見えてしまう、とか、ブラウスのボタンの間から中が見えてしまう、とか、動くとブラジャーの紐が肩から何度も落ちてしまう、とか、パンツのウエストが合っているのにお尻がブカブカで変なたるみができてしまう、とか。ほんの少し体にあわない、そんな小さくて、でも常に気になる嫌な着心地ととてもよく似ているように思います。

何十枚もある着物と何十枚もある長襦袢を前にして、あらゆる部分の寸法が少しずつ異なるものをすべてひっくり返して各自で確認し、きちんと整理することは大仕事。

着たい着物とそれに合うであろう長襦袢を目星をつけてたとう紙から出し、寸法を測って、身に纏ってみては、これではない、あれでもない、と繰り返した結果、頭がこんがらがって訳が分からなくなり・・。毎回、「今回はとりあえずなんとかなるこの組み合わせを選んでおいて、整理するのはまた今度にしよう・・( 一一)」と、その度に諦めること数十年。式典やお茶会の時などに、毎回箪笥から何枚ものたとう紙を出したり入れたり出したり入れたり・・どっと疲れていました。

でもね。

我が家の箪笥の中には、質の良いものがたくさんあるのです。

絹も綿も、育てて布にするまでに途方もない手間がかかることもあって、実は現代は絹も木綿も昔とは品質が異なってしまっているのだと職人の方がおっしゃっていたのを思い出すのですが。

とんでもなく高価なものはないものの、昔の質の良い正絹で、誠実な手仕事が施された何枚もの着物。古典的な柄行きや今はもう刺せる職人さんがいないために手に入らないような刺繍の着物を眺めていると、うっとりするほど(*´ω`*)

おばあちゃん、せっかく良いもの揃えてくれたのに、お友達とのお出かけに着ていこうとか、美術館に着ていこうとか、イベントにあわせて着てみようとか思っても、これじゃ着られへん(=_=) と、母と何度ため息をついたことか。

で。「モーレツ営業職」だった仕事を引退した母が、ここ数年、着物のお手入れがてら、寸法をある程度統一するべくお直しに出すようになったのです。そうすれば、寸法的にどれが対になっているかなどと考えなくてもきちんと着られるようになる。ウールや綿、シルックなど普段着ている着物ではない、正絹の着物たちを一枚ずつ根気よく、いつでも着られるようにしてきました。すべてを統一することはできませんが、基本的にこういう寸法のものがあると把握可能なまでにはお直し。

そして、もう着ないものについては、別のものに生まれ変わらせるべく、別途保管することにしました。まだ整理途中ですが、だいぶ把握しやすくなってきています。(母と私は身長や手の長さ、肩幅など極端に違わないので、身幅や体の厚みが異なることを考慮に入れて着れば、同じものが着られます。)

私は私で、この数か月、すべてのコレクション(?)を前にウンウン唸っています。色や柄行き、裄丈、袖丈の寸法をたとう紙にメモし、格や季節ごとにおおまかに分けた引出しの中で、ひと目でだいたい把握できるようにしてきました。次はこれらの着物、長襦袢、帯などを一覧表にまとめてみようと思っているところです。

通し番号をつけるとさらにみつけやすいかも。写真はちょっと面倒だけれど一覧表に付けるとわかりやすいかな。写真はたとう紙にも貼ってもいいかも。なんて、いろいろ検討中ですが、続きはまた別の記事にて。

カオスな箪笥の中身と格闘中のごきげん子猫

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